枕草子 補 清げなる若き人の(能因本:旧全集318段)

すきずきし 枕草子
中巻下
補10
清げなる
いみじう暑き昼中

(旧)大系,新大系,新編全集=三巻本:ナシ
(旧)全集=能因本:318段, 前田本:ナシ
三巻本になく能因本のみにある段は、著者が身内本たる能因本からより広い世間の目を意識し(最終段:人のために便なき言ひ過ぐしもしつべき所々もあれば)、なかったことにして改訂したものと解する(独自)
本段はその中で最も微妙だが、前段のすきずきしくて独り住みする人の直衣ばかりひっかけた描写と対になり、若いイケメンをそういう色目で見ていると見られかねないとか。童も渡された文でなく主人を見ると。全集は単に上を見る、あるいは上の空とするが、文脈からこのように解する。女性があえてイケメン(清げなる若き人)として目線を描写しているから無関係に見れない。そして子供の方がそういう感情が素直に出ると。若くてよろしき男の段は直接的でそのような微妙なニュアンスはない。

 


 
 清げなる若き人の、直衣も、うへの衣も、狩衣もいとよくて、衣(きぬ)がちに袖口厚く見えたるが、馬に乗りて行くままに、供なる童の、立て文を、目を空にて取りたるこそをかしけれ。