(旧)大系:89段
新大系:85段、新編全集:85段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:93段
なまめかしきもの ほそやかにきよげなる君達の直衣姿。をかしげなる童女の、うへの袴など、わざとはあらでほころびがちなる、汗衫ばかり着て、卯槌、薬玉などながくつけて、勾欄のもとなどに、扇さしかくしてゐたる。
薄様の草子。柳の萌え出でたるに、あをき薄様に書きたる文つけたる。三重がさねの扇。五重はあまりあつくなりて、もとなどにくげなり。いとあたらしからず、いたうものふりぬ桧皮葺の屋に、ながき菖蒲をうるはしうふきわたしたる。あをやかなる御簾の下より、几帳の朽木形いとつややかにて、紐の風に吹きなびかされたる、いとをかし。
白き組の細き。帽額あざやかなる。簾の外、勾欄に、いとをかしげなる猫の、あかき首綱にしろき札つきて、村濃の綱ながう引きて、いかりの緒、組のながきなどつけて引きありくも、をかしうなまめきたり。
五月の節のあやめの蔵人。菖蒲のかずら、赤紐の色にはあらぬを、領布、裙帯などして、薬玉、親王たち、上達部の立ち並み給へるに奉れる、いみじうなまめかし。取りて腰に引きつけ、舞踏し、拝し給ふも、いとめでたし。
むらさきの紙を包み文にて、房ながき藤につけたる。小忌の君たちもいとなまめかし。