この人、東寺の門に雨宿りせられたりけるに、かたは者どもの集まりゐたるが、手も足もねぢ歪み、うち反りて、いづくも不具に異様なるを見て、とりどりに類なき曲者なり、尤も愛するに足れりと思ひて、目守り給ひけるほどに、やがてその興尽きて、醜く、いぶせく覚えければ、ただ素直に珍しからぬ物には如かずと思ひて、帰りて後、この間、植木を好みて、異様に曲折あるを求めて、目を喜ばしめつるは、かのかたはを愛するなりけりと、興なく覚えければ、鉢に植ゑられける木ども、皆掘り捨てられにけり。
さもありぬべき事なり。