御随身秦の重躬、北面の下野の入道信願を、「落馬の相ある人なり。よくよく慎み給へ」といひけるを、いとまことしからず思ひけるに、信願、馬より落ちて死ににけり。 道に長じぬる一言、神のごとしと人思へり。 さて、「いかなる相ぞ」と人の問ひければ、「きはめて桃尻にして、沛艾の馬を好みしかば、この相を負せ侍りき。いつかは申し誤りたる」とぞいひける。