身死して財残ることは、知者のせざるところなり。 よからぬ物たくはへ置きたるもつたなく、よき物は心をとめけむとはかなし。 こちたく多かる、まして口をし。 「われこそ得め」などいふ者どもありて、後に争ひたる、あさまし。 後はたれにと志す物あらば、生けらむうちにぞ譲るべき。 朝夕なくてかなはざらむ物こそあらめ、そのほかは何も持たでぞあらまほしき。