人の田を論ずる者、うたへに負けて、ねたさに、「その田を刈りて取れ」とて人をつかはしけるに、まづ道すがらの田をさへ刈りもてゆくを、 「これは論じ給ふところにあらず。いかにかくは」といひければ、刈る者ども、「その所とても、刈るべき理なけれども、僻事せむとてまかる者なれば、いづくをか刈らざらむ」とぞいひける。 理いとをかしけり。