亀山殿建てられんとて地を引かれけるに、大きなる蛇、数も知らず凝り集まりたる塚ありけり。 「この所の神なり」と言ひて、事の由を申しければ、「いかがあるべき」と勅問ありけるに、「古くよりこの地を占めたる物ならば、さうなく掘り捨てられ難し」と皆人申されけるに、この大臣、一人、「王土にをらん虫、皇居を建てられんに、何の祟りをかなすべき。鬼神はよこしまなし。咎むべからず。ただ、皆掘り捨つべし」と申されければ、塚を崩して、蛇を大井川に流してけり。
さらに祟りなかりけり。