ある人、久我縄手を通りけるに、小袖に大口着たる人、木造りの地蔵を田の中の水におし浸して、なんごろに洗ひけり。 心得難く見るほどに、狩衣の男二三人出で来て、「ここにおはしましけり」とて、この人を具して去にけり。 久我内大臣殿にてぞおはしける。
尋常におはしましける時は、神妙に、やんごとなき人にておはしけり。