公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞こえしは、きはめて腹あしき人なりけり。 坊のかたはらに大きなる榎の木のありければ、人「榎の木の僧正」とぞいひける。 「この名しかるべからず」とて、かの木を切られにけり。 その根のありければ、「きりくひの僧正」といひけり。 いよいよ腹立ちて、きりくひを掘り捨てたりければ、その跡大きなる堀にてありければ、「堀池の僧正」とぞいひける。