堀川相国は、美男のたのしき人にて、そのこととなく過差を好み給ひけり。 御子基俊卿を大理になして、庁務おこなはれけるに、庁屋の唐櫃見ぐるしとて、めでたく作り改めらるべきよし仰せられけるに、この唐櫃は、上古より伝はりて、その始めを知らず、数百年を経たり。 累代の公物、古弊を持ちて規模とす、たやすく改めがたきよし、故実の諸官等申しければ、その事やみにけり。