原文 | 現代語訳 | 解釈上の注意点 |
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ある人、弓射ることを習ふに、 | ある人が、弓を射ることを習う時に、 | |
諸矢をたばさみて的に向かふ。 | 諸矢を手に挟んで的に向かう。 | ・諸矢=甲と乙の矢 |
師のいはく、「初心の人、二つの矢を持つことなかれ。 | 師がいわく、「初心の人は、二つの矢をもたないように。 | 〇なかれ:願望希望 |
のちの矢を頼みて、初めの矢になほざりの心あり。 | 後の矢を当てにして、初めの矢をなおざりにする心がある。 | |
毎度ただ得失なく、 | 毎回ただもう一心に、当たる当たらないではなく、 | ・得失=分別(75段) |
この一矢に定むべしと思へ」と言ふ。 | この一矢で決めようと思え」と言う。 | 〇定む |
わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろかにせんと思はんや。 | わずかに二つの矢を、師の前で一つをおろそかにしようと思うだろうか(自分では思わないだろう)。 | ●反語解釈 |
懈怠の心、みづから知らずといへども、師これを知る。 | 怠ける心は、自分では分からないと(そんなことないと)いっても、師はこれが分かる。 | |
このいましめ、万事にわたるべし。 | この戒めは、万事に通じるだろう。 | |
道を学する人、夕には朝あらんことを思ひ、朝には夕あらんことを思ひて、重ねてねんごろに修せんことを期す。 | 道を修める人は、夕には明日の朝があることを思い、朝には夕があることを思って、その度に念入りに学ぼうと決意する。 | ●道:仏道非限定 |
いはんや一刹那の内において、懈怠の心あることを知らんや。 | いわんや、今この瞬間において、怠け心があることを知るだろうか。 | ●一刹那=今この瞬間 |
何ぞ、ただ今の一念において、ただちにすることのはなはだ難き。 | 何と(なぜ)、ただ今この時において、すぐに(〇おろそかにせず ×単に実行)することが甚だ難しいのか。 |
〇何ぞ:感嘆+疑問・問い掛け ●ただちにする:単なる実行では前段の趣旨を没却 |