風も吹きあへずうつろふ人の花に、馴れにし年月を思へば、はれと聞きし言の葉ごとに忘れぬものから、わが世のほかになりゆくならひこそ、亡き人の別れよりもまさりて悲しきものなれ。
されば、白き糸の染まむことを悲しび、路のちまたに分かれんことを嘆く人もありけんかし。 堀河院の百首の歌の中に、
♪1 昔見し 妹が垣根は 荒れにけり つばなまじりの すみれのみして
寂しき気色、さること侍りけん。