いづくにもあれ、しばし旅だちたるこそ、目さむる心地すれ。 そのわたりここかしこ見ありき、ゐなかびたる所、山里などはいと目なれぬことのみぞ多かる。
都へたよりもとめて文やる。 「その事かの事、便宜に忘るな」などいひやるこそをかしけれ。 さやうの所にてこそ、よろづに心づかせらるれ。
持てる調度までよきはよく、能ある人、かたちよき人も、常よりはをかしとこそ見ゆれ。 寺、社などに忍びてこもりゐたるもをかし。