これも今は昔、業遠朝臣死ぬる時、御堂の入道殿仰せられけるは、「言ひ置くべき事あらんかし。不便の事なり」とて、解脱寺の観修僧正を召して、業遠にむかひ給ひて加持する間、死人たちまち蘇生して、用事を言ひて後、また目を閉ぢてけりとか。