後鳥羽院の御時、水無瀬殿に、夜々山より、から笠程なる物の光りて、御堂へ飛び入る事侍りけり。
西面の者共、面々に、「これを見あらはして高名せん」と、心にかけて用心し侍りけれども、むなしくてのみ過ぎけるに、ある夜、景賢ただひとり、中島に寝て侍りけるに、例の光り物、山より池上を飛び行きけるに、起きんも心もとなくて、あふのきに寝ながら、よく引て射たりければ、手ごたへして池へ落ち入る物ありけり。
その後、人々に告げて、火ともして、面々見ければ、ゆゆしく大なる鼯の、年古り、毛なども禿げ、しぶとなるにてぞ侍りける。