俳 句 |
『おくのほそ道』 素龍清書原本 校訂 |
『新釈奥の細道』 |
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とかくして越え行くままに、阿武隈川を渡る。 | とかくして越行くまゝにあふくま川をわたる | |
左に会津根高く、 | 左に會津根高く | |
右に岩城、相馬、三春の庄、 | 右に岩城相馬三春の庄 | |
常陸、下野の地をさかひて | ひたち下野の地をさかひて | |
山連なる。 | 山つらなる | |
影沼といふ所を行くに、 | かげ沼といふ所を行に | |
今日は空曇りて物影映らず。 | けふは空くもりて影うつらず | |
須賀川の駅に等窮といふ者を尋ねて、 | すか川の驛に等窮といふものを尋て | |
四五日とどめらる。 | 四五日とゝめらる | |
まづ、「白河の関いかに越えつるや」と問ふ。 | 先白河のせきいかに越つるやと問ふ | |
「長途の苦しみ、身心疲れ、 | 長途の勞身心くるしく | |
かつは風景に魂奪はれ、 | 風景に魂うばはれ | |
懐旧に腸を断ちて、 | 懷舊に腸を斷て | |
はかばかしう思ひめぐらさず。 | はか〳〵しうおもひめくらさず | |
♪ 14 |
風流の 初めや奥の 田植歌 | 風流の はしめやおくの 田植うた |
無下に越えんもさすがに」と語れば、 | 無下に越えんもさすがにと語れは | |
脇、第三と続けて、三巻となしぬ。 | 脇第三とつゞけて三卷と一本とはトアリなしぬ | |
この宿のかたはらに、 | 此宿の傍に | |
大きなる栗の木陰を頼みて、世をいとふ僧あり。 | 大なる栗の木蔭をたのみて世をいとふ僧あり | |
橡拾ふ太山もかくやとしづかにおぼえられて、 | とちひろふ深山もかくやと閒に覺えられて | |
ものに書き付け侍る。 | ものにかきつけ侍る | |
その詞、 | ||
『栗といふ文字は、 | 栗といふ文字は | |
西の木と書きて、西方浄土に便りありと、 | 西の木とかきて西方淨土に便ありと | |
行基菩薩の一生杖にも柱にも | 行基ぼさつ一本ぼさつのトアリ一生杖にもはしらにも | |
この木を用ゐ給ふとかや』 | 此木を用ひ給ふとかや | |
♪ 15 |
世の人の 見付けぬ花や 軒の栗 | 世の人の みつけぬ花や 軒の栗 |