俳 句 |
『おくのほそ道』 素龍清書原本 校訂 |
『新釈奥の細道』 |
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山形領に立石寺といふ山寺あり。 | 山形領に立石寺といふ山寺あり | |
慈覚大師の開基にして、 | 慈覺大師の開基にして一本しノ字ナシ | |
ことに清閑の地なり。 | 殊に勝閑一本淸簡トアリの地なり | |
一見すべきよし、人々の勧むるによりて、 | 一見すべきよし人々のすゝむるによつて | |
尾花沢よりとつて返し、その間七里ばかりなり。 | 尾花澤より取てかへし其間七里許なり | |
日いまだ暮れず。 | 日いまだくれず | |
ふもとの坊に宿借りおきて、山上の堂に登る。 | 麓の坊に宿かり置て山上の堂に登る | |
岩に巌を重ねて山とし、松柏年ふり、 | 岩に巖を重て山とし松柏年ふり | |
土石老いて苔なめらかに、 | 土石老てこけなめらかに | |
岩上の院々扉を閉ぢて、物の音聞こえず。 | 岩上の院に扉を閉て物の音聞へず | |
岸をめぐり、岩を這ひて、仏閣を拝し、 | 岸をめぐり岩を這て佛閣を拜し | |
佳景寂莫として心澄みゆくのみおぼゆ。 | 佳景寂寞として心すみ行のみ覺ゆ | |
♪ 31 |
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声 | 閑さや 岩にしみ込一本しみ入るトアリ せみの聲 |