俳 句 |
『おくのほそ道』 素龍清書原本 校訂 |
『新釈奥の細道』 |
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十六日、空晴れたれば、 | 十六日空晴たれば | |
ますほの小貝拾はんと、 | ますほの小貝ひろはんと | |
種の浜に舟を走す。 | 種の濱に舟を走らす | |
海上七里あり。 | 海上七里有り | |
天屋某といふ者、 | 天屋何某といふもの | |
破籠、小竹筒など | 破籠小竹筒など | |
こまやかにしたためさせ、 | こまやかにしたゝめさせ | |
僕あまた舟にとり乗せて、 | 僕あまた舟に取のせて | |
追ひ風、時の間に吹き着きぬ。 | 追風時の間に吹つけぬ | |
浜はわづかなる海士の小家にて、 | 濱はわづかなる蜑の小家にて | |
侘びしき法華寺あり。 | 侘しき法花寺有り | |
ここに茶を飲み、酒を暖めて、 | こゝに茶をのみ酒を煖めて | |
夕暮れの寂しさ、感に堪へたり。 | 夕昏の淋しき感にたへたり | |
♪ 64 |
寂しさや 須磨に勝ちたる 浜の秋 | 寂しさや 須磨に勝たる 濱の秋 |
♪ 65 |
波の間や 小貝にまじる 萩の塵 | 浪の間や 小貝もましる 萩の塵 |
その日のあらまし、等栽に筆をとらせて寺に残す。 | 其日の有まし等栽に筆とらせて寺にのこす |