俳 句 |
『おくのほそ道』 素龍清書原本 校訂 |
『新釈奥の細道』 |
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最上川乗らんと、 | もかみ川のらんと | |
大石田といふ所に日和を待つ。 | 大石田と云所に日和を待 | |
ここに古き俳諧の種こぼれて、 | こゝに古き古きノ二字一本ニナシ俳諧のたねこぼれて | |
忘れぬ花の昔を慕ひ、 | 忘ぬ花の昔をしたひ | |
芦角一声の心をやはらげ、この道にさぐり足して、 | 蘆角一聲の心をやはらげ此道にさぐり足して | |
新古二道に踏み迷ふといへども、 | 新古二道にふみまどふといへども | |
道しるべする人しなければと、 | 道しるべする人〳〵なければと | |
わりなき一巻残しぬ。 | わりなき一卷をのこしぬ | |
このたびの風流ここに至れり。 | 此度の風流こゝにいたれり | |
最上川は陸奥より出でて、山形を水上とす。 | もかみ川はみちのくより出で山形をみなかみとす | |
碁点、隼などいふ恐ろしき難所あり。 | こでん隼などいふおそろしき難所有り | |
板敷山の北を流れて、果ては酒田の海に入る。 | 板敷山の北を流てはては酒田の海に入る | |
左右山覆ひ、茂みの中に舟を下す。 | 左右山覆ひしげみの中に船を下す | |
これに稲積みたるをや、稲舟といふならし。 | 是にいねつみたるをやいな舟といふならし | |
白糸の滝は、青葉のひまひまに落ちて、 | 白糸の瀧は靑葉のひま〳〵に落て | |
仙人堂、岸に臨んで立つ。 | 仙人堂岸に溢て立 | |
水みなぎつて、舟危し。 | 水漲て舟あやぶし | |
♪ 32 |
五月雨を あつめて早し 最上川 | 五月雨を あつめて早し一本涼しトアリ 最上川 |