俳 句 |
『おくのほそ道』 素龍清書原本 校訂 |
『新釈奥の細道』 |
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三代の栄耀一睡のうちにして、 | 三代の榮耀一睦睡ノ誤リナリのうちにして | |
大門の跡は一里こなたにあり。 | 大門のあとは一里こなたに有り | |
秀衡が跡は田野になりて、 | ひでひらが跡は田野に成て一本ありてトアリ | |
金鶏山のみ形を残す。 | 金鷄山のみ形を殘す | |
まづ、高館に上れば、 | 先たかだちにのぼれば | |
北上川、南部より流るる大河なり。 | 北上川南部より流るゝ大河也 | |
衣川は、和泉が城をめぐりて、 | 衣河は和泉か城をめぐりて | |
高館の下にて大河に落ち入る。 | 高舘の下にて大河に落入る | |
泰衡らが旧跡は、 | 康衡等か舊跡は | |
衣が関を隔てて、南部口をさし固め、 | 衣か關を停て南部口をさしかため | |
夷を防ぐと見えたり。 | 痍夷ノ誤リナリをふせぐと見へたり | |
さても義臣すぐつてこの城にこもり、 | 偖も義心勝つて此城にこもり | |
功名一時の叢となる。 | 功名一時のくさむらとなる | |
国破れて山河あり、城春にして草青みたり、と、 | 國破れて山河あり城春にして草靑みたりと | |
笠うち敷きて、時の移るまで涙を落とし侍りぬ。 | 笠うち敷て時のうつるまで泪を落し侍りぬ | |
♪ 23 |
夏草や つはものどもが 夢の跡 | 夏草や 兵どもがが一本のトアリ 夢の跡 |
♪ 24 |
卯の花に 兼房見ゆる 白毛かな 曾良 | 卯花に 兼房みゆる 白毛哉 曾良 |
かねて耳驚かしたる二堂開帳す。 | 兼て耳驚したる二堂開帳す | |
経堂は三将の像を残し、 | 經堂は三將の像をのこし | |
光堂は三代の棺を納め、三尊の仏を安置す。 | 光堂は三代の棺ををさめ三尊の佛を安置す | |
七宝散りうせて、珠の扉風に破れ、 | 七寶ちりうせて玉の扉風にやぶれ | |
金の柱霜雪に朽ちて、 | 金のはしら露霜に朽て | |
すでに頽廃空虚の叢となるべきを、 | 既頽廢空虛の叢と成べきを | |
四面新たに囲みて、甍を覆ひて風雨をしのぐ。 | 四面新に圍て甍(イカラ)を覆て風雨を凌ぎ | |
しばらく千歳の形見とはなれり。 | 暫時千歲のかたみとはなれり | |
♪ 25 |
五月雨の 降り残してや 光堂 | 五月雨の ふりのこしてや 光堂 |