♀故中務宮の北の方
三条右大臣殿(藤原定方:百人一首25歌人)
♀かの北の方の御おとうと九の君
左兵衛の督の君=侍従
♪♀御息所(右大臣の御息所)
♪宮
故中務宮の北の方、
失せ給ひてのち、ちひさき君たちをひき具して、
三条右大臣殿にすみ給ひけり。
御忌みなどすぐしては、つひにひとりはすぐし給ふまじかりければ、
かの北の方の御おとうと九の君を、やがてえ給はむとおぼしけるを、
なにかは、さもと、親はらからもおぼしたりけるに、いかがありけむ、
左兵衛の督の君、侍従にものし給ひけるころ、その御文もて来となむ、聞き給ひける。
さて心づきなしとやおぼしけむ、もとの宮になむ、わたり給ひにける。
その時に御息所の御もとより、
♪141
なき人の 巣守にだにも なるべきを
いまはとかへる 今日の悲しさ
宮の御返し、
♪142
巣守にと 思ふ心は とどむれど
かひあるべくも なしとこそ聞け
となむありける。