大和物語159段:染殿の内侍といふいますかりけり

われもしか 大和物語
第六部
159段
染殿の内侍
在中将

登場人物

 
 ♪♀染殿の内侍
 ♪能有の大臣

原文

 
 
 染殿の内侍といふ、いますかりけり。
 それを能有の大臣と申すなむ、ときどきすみ給ひける。
 
 ものをよくし給ひければ、
 御衣どもをなむ、あづけさせ給ひけるに、
 綾どもを、おほくつかはしたりければ、
 
 「雲鳥の紋の綾をや、染むべき」
 と聞こえたりしを、
 
 ともかくも宣はせねば、
 「えなむつかうまつらぬ。
 さだめ承はらむ」
 と申し奉りければ、
 
 大臣の御返しに、
 

♪265
  雲鳥の あやの色をも おもほえず
  人をあひ見で 年の経ぬれば

 
 となむ宣へりける。
 
 

われもしか 大和物語
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159段
染殿の内侍
在中将