大和物語143段:むかし、在中将のみむすこ在次君

御息所の御姉 大和物語
第五部
143段
在次君
甲斐の国

登場人物

 
 ♪在中将のみむすこ在次君(在原滋春)
 ♀在中将のみむすこ在次君といふが妻=山蔭の中納言のみめひ=五条の御=守の召人
 ♀在次君のいもうと=伊勢守の妻
 この男のはらから(在原棟梁、師尚)

原文

 
 
 むかし、在中将のみむすこ在次君といふが妻なる人なむありける。
 女は山蔭の中納言のみめひにて、
 五条の御となむいひける。
 

 かの在次君のいもうとの、
 伊勢守の妻にていますかりけるがもとにいきて、
 守の召人にてありけるを、
 この妻の兄の在次君は、しのびてすむになむありける。
 

 われのみと思ふに、
 この男のはらからなむ、またあひたるけしきなりける。
 
 さりければ、女のもとに、
 

♪230
  忘れなむと 思ふ心の 悲しきは
  憂きも憂からぬ ものにぞありける

 
 となむよみたりける。
 

 今はみな古ごとになりたることなり。
 
 

御息所の御姉 大和物語
第五部
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甲斐の国