大和物語137段:志賀の山越えの道に

さわぐなる 大和物語
第五部
137段
志賀の山
こやくしくそ

登場人物

 
 故兵部卿の宮
 ♪♀としこ

原文

 
 
 志賀の山越えの道に、いはえといふ所に、
 故兵部卿の宮、
 家をいとをかしうつくり給うて、ときどきおはしましけり。
 
 いとしのびておはしまして、
 志賀にまうづる女どもを見給ふときもありけり。
 
 おほかたも、いとおもしろう、家もいとをかしうなむありける。
 

 としこ、
 志賀にまうでけるついでに、
 この家に来て、めぐりつつ見て、あはれがりめでなどして、
 書きつけたりける。
 

♪214
  かりにのみ 来る君待つと ふりいでつつ
  鳴くしが山は 秋ぞ悲しき

 
 となむ、書きつけていにける。
 
 

さわぐなる 大和物語
第五部
137段
志賀の山
こやくしくそ