大和物語41段:源大納言の君の御もとに

つつめども 大和物語
第二部
41段
源大納言
恵秀

登場人物

 
 ♪源大納言の君(源清蔭)
 ♀としこ(俊子:後撰集、承香殿俊子:拾遺集)

原文

 
 
 源大納言の君の御もとに、としこはつねにまゐりけり。
 曹司してすむ時もありけり。
 

 をかしき人にて、よろづのことをつねにいひかはし給ひけり。
 つれづれなる日、
 
 このおとど、
 としこ、
 またこのむすめ、姉にあたる、あやつこといひてありけり。母に似て、心もをかしかりけり。

 また、このおとどのもとに、よぶこといふ人ありけり。それももののあはれ知りて、いと心をかしき人なりけり。
 

 これ四人つどひて、
 よろづの物語し、世の中のはかなきこと、世間のことあはれなるいひいひて、
 かのおとどの詠み給ひける。
 

♪54
  いひつつも 世ははかなきを かたみには
  あはれといかで 君に見えまし

 
 と詠み給ひければ、
 たれもたれも、返しはせで、集まりてよよとなむ泣きける。
 

 あやしかりけるものどもにこそはありけれ。
 
 

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