♪♪♀監の命婦(諸説あり)
中務の宮(醍醐天皇皇子式明親王:旧大系・新全集、式明ではなく監の命婦との関係から(?)醍醐皇子重明親王:全訳注。しかし文面上論理が曖昧)
監の命婦の許に、
中務の宮おはしまし通ひけるを、
「方のふたがれば、今宵はえなむまうでぬ」
と宣へりければ、
その御返り事に、
♪11
逢ふことの 方はさのみぞ ふたがらむ
ひと夜めぐりの 君と思へば
とありければ、
方ふたがりたりけれど、おはしましてなむ、大殿籠りにける。
かくてまた、久しく音もし給はざりけるに、
「嵯峨の院に狩すとてなむ、久しう消息などもものせざりける。
いかにおぼつかなく思ひつらむ」
など宣へりける御返り事に、
♪12
大澤の 池の水くき 絶えぬとも
なにか恨みむ さがのつらさは
御返しは、これにやおとりけむ、人忘れにけり。