大和物語11段:故源大納言の君

監の命婦 大和物語
第一部
11段
住の江の松
春の夜の夢

登場人物

 
 ♪16故源大納言の君(源清蔭)
 ♪17♀忠房のぬしのみむすめ東の方(藤原忠房の娘。千兼の姉妹、としこの義理姉妹)
 ♀亭子院の若宮(通説:醍醐天皇皇女韶子内親王)

原文

 
 
 故源大納言の君、
 忠房のぬしの御女(みむすめ)東の方を、年ごろ思ひて住み渡り給ひけるを、
 亭子院の若宮につき奉り給ひて、はなれ給うて、ほど経にけり。
 

 子どもなどありければ、言も絶えず、おなじ所になむ住み給ひける。
 

 さて、詠み給へりける、
 

♪16
  住の江の 松ならなくに 久しくも
  君と寝ぬ夜の なりにけるかな

 

 とありければ、返し、
 

♪17
  久しくは おもほえねども 住の江の
  松やふたたび 生ひかはるらむ

 
 となむありける。
 
 

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第一部
11段
住の江の松
春の夜の夢