目次 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
747 業× |
748 仲平 |
749 兼輔 |
750 躬恒 |
||||||
751 元方 |
752 不知 |
753 友則 |
754 不知 |
755 不知 |
756 伊勢 |
757 不知 |
758 不知 |
759 不知 |
760 不知 |
761 不知 |
762 不知 |
763 不知 |
764 不知 |
765 不知 |
766 不知 |
767 不知 |
768 兼芸 |
769 貞登 |
770 遍昭 |
771 遍昭 |
772 不知 |
773 不知 |
774 不知 |
775 不知 |
776 不知 |
777 不知 |
778 不知 |
779 兼覧 |
780 伊勢 |
781 雲林 |
782 小町 |
783 貞樹 |
784 有常女× |
785 業× |
786 景式 |
787 友則 |
788 宗于 |
789 兵衛 |
790 小町姉? |
791 伊勢 |
792 友則 |
793 不知 |
794 躬恒 |
795 不知 |
796 不知 |
797 小町 |
798 不知 |
799 素性 |
800 不知 |
801 宗于 |
802 素性 |
803 素性 |
804 貫之 |
805 不知 |
806 不知 |
807 直子 |
808 稲葉? |
809 忠臣 |
810 伊勢 |
811 不知 |
812 不知 |
813 不知 |
814 興風 |
815 不知 |
816 不知 |
817 不知 |
818 不知 |
819 不知 |
820 不知 |
821 不知 |
822 小町 |
823 貞文 |
824 不知 |
825 不知 |
826 是則 |
827 友則 |
828 不知 |
||
※不知が50%(41/82)。恋一の次に歌が多く全体では二番目に歌が多い巻。 |
0747 | |
---|---|
詞書 |
五条のきさいの宮の にしのたいにすみける人に ほいにはあらてものいひわたりけるを、 む月のとをかあまりに なむほかへかくれにける、あり所はききけれとえ物もいはて、 又のとしのはるむめの花さかりに 月のおもしろかりける夜、 こそをこひてかのにしのたいにいきて月のかたふくまて あはらなるいたしきにふせりてよめる |
作者 | 在原業平朝臣(※問題あり) |
原文 |
月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わか身ひとつは もとの身にして |
かな |
つきやあらぬ はるやむかしの はるならぬ わかみひとつは もとのみにして |
コメ |
出典:伊勢4段(西の対)。 |
0748 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 藤原なかひらの朝臣(藤原仲平) |
原文 |
花すすき 我こそしたに 思ひしか ほにいてて人に むすはれにけり |
かな |
はなすすき われこそしたに おもひしか ほにいててひとに むすはれにけり |
0749 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 藤原かねすけの朝臣(藤原兼輔) |
原文 |
よそにのみ きかましものを おとは河 渡るとなしに 見なれそめけむ |
かな |
よそにのみ きかましものを おとはかは わたるとなしに みなれそめけむ |
0750 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 凡河内みつね(凡河内躬恒) |
原文 |
わかことく 我をおもはむ 人もかな さてもやうきと 世を心みむ |
かな |
わかことく われをおもはむ ひともかな さてもやうきと よをこころみむ |
0751 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | もとかた(在原元方) |
原文 |
久方の あまつそらにも すまなくに 人はよそにそ 思ふへらなる |
かな |
ひさかたの あまつそらにも すまなくに ひとはよそにそ おもふへらなる |
0752 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみひとしらす |
原文 |
見ても又 またも見まくの ほしけれは なるるを人は いとふへらなり |
かな |
みてもまた またもみまくの ほしけれは なるるをひとは いとふへらなり |
0753 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | きのとものり(紀友則) |
原文 |
雲もなく なきたるあさの 我なれや いとはれてのみ 世をはへぬらむ |
かな |
くももなく なきたるあさの われなれや いとはれてのみ よをはへぬらむ |
0754 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
花かたみ めならふ人の あまたあれは わすられぬらむ かすならぬ身は |
かな |
はなかたみ めならふひとの あまたあれは わすられぬらむ かすならぬみは |
0755 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
うきめのみ おひて流るる 浦なれは かりにのみこそ あまはよるらめ |
かな |
うきめのみ おひてなかるる うらなれは かりにのみこそ あまはよるらめ |
0756 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 伊勢(伊勢の御) |
原文 |
あひにあひて 物思ふころの わか袖に やとる月さへ ぬるるかほなる |
かな |
あひにあひて ものおもふころの わかそてに やとるつきさへ ぬるるかほなる |
0757 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
秋ならて おく白露は ねさめする わかた枕の しつくなりけり |
かな |
あきならて おくしらつゆは ねさめする わかたまくらの しつくなりけり |
0758 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
すまのあまの しほやき衣 をさをあらみ まとほにあれや 君かきまさぬ |
かな |
すまのあまの しほやきころも をさをあらみ まとほにあれや きみかきまさぬ |
0759 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
山しろの よとのわかこも かりにたに こぬ人たのむ 我そはかなき |
かな |
やましろの よとのわかこも かりにたに こぬひとたのむ われそはかなき |
0760 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
あひ見ねは こひこそまされ みなせ河 なににふかめて 思ひそめけむ |
かな |
あひみねは こひこそまされ みなせかは なににふかめて おもひそめけむ |
0761 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
暁の しきのはねかき ももはかき 君かこぬ夜は 我そかすかく |
かな |
あかつきの しきのはねかき ももはかき きみかこぬよは われそかすかく |
0762 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
玉かつら 今はたゆとや 吹く風の おとにも人の きこえさるらむ |
かな |
たまかつら いまはたゆとや ふくかせの おとにもひとの きこえさるらむ |
0763 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
わか袖に またき時雨の ふりぬるは 君か心に 秋やきぬらむ |
かな |
わかそてに またきしくれの ふりぬるは きみかこころに あきやきぬらむ |
0764 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
山の井の 浅き心も おもはぬに 影はかりのみ 人の見ゆらむ |
かな |
やまのゐの あさきこころも おもはぬに かけはかりのみ ひとのみゆらむ |
0765 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
忘草 たねとらましを 逢ふ事の いとかくかたき 物としりせは |
かな |
わすれくさ たねとらましを あふことの いとかくかたき ものとしりせは |
0766 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
こふれとも 逢ふ夜のなきは 忘草 夢ちにさへや おひしけるらむ |
かな |
こふれとも あふよのなきは わすれくさ ゆめちにさへや おひしけるらむ |
0767 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
夢にたに あふ事かたく なりゆくは 我やいをねぬ 人やわするる |
かな |
ゆめにたに あふことかたく なりゆくは われやいをねぬ ひとやわするる |
0768 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | けむけい法し(兼芸法師) |
原文 |
もろこしも 夢に見しかは ちかかりき おもはぬ中そ はるけかりける |
かな |
もろこしも ゆめにみしかは ちかかりき おもはぬなかそ はるけかりける |
0769 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | さたののほる(貞登、仁明の皇子) |
原文 |
独のみ なかめふるやの つまなれは 人を忍ふの 草そおひける |
かな |
ひとりのみ なかめふるやの つまなれは ひとをしのふの くさそおひける |
0770 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 僧正へんせう(遍昭、良岑宗貞) |
原文 |
わかやとは 道もなきまて あれにけり つれなき人を まつとせしまに |
かな |
わかやとは みちもなきまて あれにけり つれなきひとを まつとせしまに |
0771 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 僧正へんせう(遍昭、良岑宗貞) |
原文 |
今こむと いひてわかれし 朝より 思ひくらしの ねをのみそなく |
かな |
いまこむと いひてわかれし あしたより おもひくらしの ねをのみそなく |
0772 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
こめやとは 思ふものから ひくらしの なくゆふくれは たちまたれつつ |
かな |
こめやとは おもふものから ひくらしの なくゆふくれは たちまたれつつ |
0773 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
今しはと わひにしものを ささかにの 衣にかかり 我をたのむる |
かな |
いましはと わひにしものを ささかにの ころもにかかり われをたのむる |
0774 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
いまはこしと 思ふものから 忘れつつ またるる事の またもやまぬか |
かな |
いまはこしと おもふものから わすれつつ またるることの またもやまぬか |
0775 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
月よには こぬ人またる かきくもり 雨もふらなむ わひつつもねむ |
かな |
つきよには こぬひとまたる かきくもり あめもふらなむ わひつつもねむ |
0776 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
うゑていにし 秋田かるまて 見えこねは けさはつかりの ねにそなきぬる |
かな |
うゑていにし あきたかるまて みえこねは けさはつかりの ねにそなきぬる |
0777 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
こぬ人を まつゆふくれの 秋風は いかにふけはか わひしかるらむ |
かな |
こぬひとを まつゆふくれの あきかせは いかにふけはか わひしかるらむ |
0778 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
ひさしくも なりにけるかな すみのえの 松はくるしき 物にそありける |
かな |
ひさしくも なりにけるかな すみのえの まつはくるしき ものにそありける |
0779 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | かねみのおほきみ(兼覧王) |
原文 |
住の江の 松ほとひさに なりぬれは あしたつのねに なかぬ日はなし |
かな |
すみのえの まつほとひさに なりぬれは あしたつのねに なかぬひはなし |
0780 | |
詞書 |
仲平朝臣あひしりて侍りけるを かれ方になりにけれは、 ちちかやまとのかみに侍りけるもとへ まかるとてよみてつかはしける |
作者 | 伊勢(伊勢の御) |
原文 |
みわの山 いかにまち見む 年ふとも たつぬる人も あらしと思へは |
かな |
みわのやま いかにまちみむ としふとも たつぬるひとも あらしとおもへは |
0781 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 雲林院のみこ(常康親王、仁明の皇子) |
原文 |
吹きまよふ 野風をさむみ 秋はきの うつりも行くか 人の心の |
かな |
ふきまよふ のかせをさむみ あきはきの うつりもゆくか ひとのこころの |
0782 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | をののこまち(小野小町) |
原文 |
今はとて わか身時雨に ふりぬれは 事のはさへに うつろひにけり |
かな |
いまはとて わかみしくれに ふりぬれは ことのはさへに うつろひにけり |
0783 | |
詞書 | 返し |
作者 | 小野さたき(小野貞樹) |
原文 |
人を思ふ 心のこのはに あらはこそ 風のまにまに ちりみたれめ |
かな |
ひとをおもふ こころのこのはに あらはこそ かせのまにまに ちりもみたれめ |
0784 | |
詞書 |
業平朝臣(※問題あり)、 きのありつねかむすめにすみけるを、 うらむることありて しはしのあひたひるはきて ゆふさりはかへりのみしけれは よみてつかはしける |
作者 | きのありつねかむすめ(有常女※問題あり) |
原文 |
あま雲の よそにも人の なりゆくか さすかにめには 見ゆるものから |
かな |
あまくもの よそにもひとの なりゆくか さすかにめには みゆるものから |
コメ |
出典:伊勢19段(天雲のよそ)。 「むかし、男、宮仕へしける女の方に、 御達なりける人をあひ知りたりける。 ほどもなくかれにけり。 おなじ所なれば、女の目には見ゆるものから、男はあるものかと思ひたらず。 女、『天雲の よそにも人の なりゆくか さすがに目には 見ゆるものから』」 |
0785 | |
詞書 | 返し |
作者 | なりひらの朝臣(在原業平)(※問題あり) |
原文 |
ゆきかへり そらにのみして ふる事は わかゐる山の 風はやみなり |
かな |
ゆきかへり そらにのみして ふることは わかゐるやまの かせはやみなり |
コメ |
出典:伊勢19段(天雲のよそ)。 「とよめりければ、男、返し、 『天雲の よそにのみして 経ることは わが居る山の 風はやみなり』 とよめりけるは、 また男ある人となむいひける。」 |
0786 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | かけのりのおほきみ(景式王) |
原文 |
唐衣 なれは身にこそ まつはれめ かけてのみやは こひむと思ひし |
かな |
からころも なれはみにこそ まつはれめ かけてのみやは こひむとおもひし |
0787 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | とものり(紀友則) |
原文 |
秋風は 身をわけてしも ふかなくに 人の心の そらになるらむ |
かな |
あきかせは みをわけてしも ふかなくに ひとのこころの そらになるらむ |
0788 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 源宗于朝臣 |
原文 |
つれもなく なりゆく人の 事のはそ 秋よりさきの もみちなりける |
かな |
つれもなく なりゆくひとの ことのはそ あきよりさきの もみちなりける |
0789 | |
詞書 |
心地そこなへりけるころ、 あひしりて侍りける人のとはて ここちおこたりてのちとふらへりけれは、 よみてつかはしける |
作者 | 兵衛 |
原文 |
しての山 ふもとを見てそ かへりにし つらき人より まつこえしとて |
かな |
してのやま ふもとをみてそ かへりにし つらきひとより まつこえしとて |
0790 | |
詞書 |
あひしれりける人の やうやくかれかたになりけるあひたに、 やけたるちのはに ふみをさしてつかはせりける |
作者 | こまちかあね(※小野小町) |
原文 |
時すきて かれゆくをのの あさちには 今は思ひそ たえすもえける |
かな |
ときすきて かれゆくをのの あさちには いまはおもひそ たえすもえける |
コメ |
→「こまちがあね」は小町の姉ではなく、 小町姉さん(あねさん)と見るのが自然。 「つらゆき」「とものり」のようなノリの、親しみを込めた敬称。 「姉さん」といっても別人とは限らない。 |
0791 | |
詞書 |
物おもひけるころ、ものへまかりけるみちに 野火のもえけるを見てよめる |
作者 | 伊勢(伊勢の御) |
原文 |
冬かれの のへとわか身を 思ひせは もえても春を またましものを |
かな |
ふゆかれの のへとわかみを おもひせは もえてもはるを またましものを |
0792 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | とものり(紀友則) |
原文 |
水のあわの きえてうき身と いひなから 流れて猶も たのまるるかな |
かな |
みつのあわの きえてうきみと いひなから なかれてなほも たのまるるかな |
0793 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
みなせ河 有りて行く水 なくはこそ つひにわか身を たえぬと思はめ |
かな |
みなせかは ありてゆくみつ なくはこそ つひにわかみを たえぬとおもはめ |
0794 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | みつね(凡河内躬恒) |
原文 |
吉野河 よしや人こそ つらからめ はやくいひてし 事はわすれし |
かな |
よしのかは よしやひとこそ つらからめ はやくいひてし ことはわすれし |
0795 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
世中の 人の心は 花そめの うつろひやすき 色にそありける |
かな |
よのなかの ひとのこころは はなそめの うつろひやすき いろにそありける |
0796 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
心こそ うたてにくけれ そめさらは うつろふ事も をしからましや |
かな |
こころこそ うたてにくけれ そめさらは うつろふことも をしからましや |
0797 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 小野小町 |
原文 |
色見えて うつろふ物は 世中の 人の心の 花にそ有りける |
かな |
いろみえて うつろふものは よのなかの ひとのこころの はなにそありける |
0798 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
我のみや 世をうくひすと なきわひむ 人の心の 花とちりなは |
かな |
われのみや よをうくひすと なきわひむ ひとのこころの はなとちりなは |
0799 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | そせい法し(素性法師) |
原文 |
思ふとも かれなむ人を いかかせむ あかすちりぬる 花とこそ見め |
かな |
おもふとも かれなむひとを いかかせむ あかすちりぬる はなとこそみめ |
0800 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
今はとて 君かかれなは わかやとの 花をはひとり 見てやしのはむ |
かな |
いまはとて きみかかれなは わかやとの はなをはひとり みてやしのはむ |
0801 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | むねゆきの朝臣(源宗于) |
原文 |
忘草 かれもやすると つれもなき 人の心に しもはおかなむ |
かな |
わすれくさ かれもやすると つれもなき ひとのこころに しもはおかなむ |
0802 | |
詞書 |
寛平御時、御屏風に歌かかせ給ひける時、 よみてかきける |
作者 | そせい法し(素性法師) |
原文 |
忘草 なにをかたねと 思ひしは つれなき人の 心なりけり |
かな |
わすれくさ なにをかたねと おもひしは つれなきひとの こころなりけり |
0803 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | そせい法し(素性法師) |
原文 |
秋の田の いねてふ事も かけなくに 何をうしとか 人のかるらむ |
かな |
あきのたの いねてふことも かけなくに なにをうしとか ひとのかるらむ |
0804 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | きのつらゆき(紀貫之) |
原文 |
はつかりの なきこそわたれ 世中の 人の心の 秋しうけれは |
かな |
はつかりの なきこそわたれ よのなかの ひとのこころの あきしうけれは |
0805 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
あはれとも うしとも物を 思ふ時 なとか涙の いとなかるらむ |
かな |
あはれとも うしともものを おもふとき なにかなみたの いとなかるらむ |
0806 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
身をうしと 思ふにきえぬ 物なれは かくてもへぬる よにこそ有りけれ |
かな |
みをうしと おもふにきえぬ ものなれは かくてもへぬる よにこそありけれ |
0807 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 典侍藤原直子朝臣 |
原文 |
あまのかる もにすむむしの 我からと ねをこそなかめ 世をはうらみし |
かな |
あまのかる もにすむむしの われからと ねをこそなかめ よをはうらみし |
コメ |
出典:伊勢65段(在原なりける男)。 「(人目もはばからずおしかけ、恋の祈祷などしている在原なりける男の振る舞いを陳情し)女はいたう泣きけり。 「かゝる君に仕うまつらで、宿世つたなく悲しきこと、この(※在原なりける)男にほだされて」とてなむ泣きにける。 かゝるほどに帝聞しめして、この男をば流しつかはしてければ、 この女のいとこの御息所、女をばまかでさせて、蔵に籠めてしをり給うければ、蔵に籠りて泣く。 『あまの刈る 藻にすむ虫の 我からと 音をこそなかめ 世をばうらみじ』と泣きれば、 この男、人の国より夜ごとに来つゝ、」 |
0808 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | いなは(『古今和歌集目録』では稲葉) |
原文 |
あひ見ぬも うきもわか身の から衣 思ひしらすも とくるひもかな |
かな |
あひみぬも うきもわかみの からころも おもひしらすも とくるひもかな |
0809 | |
詞書 | 寛平御時きさいの宮の歌合のうた |
作者 | すかののたたおむ(菅野忠臣?) |
原文 |
つれなきを 今はこひしと おもへとも 心よわくも おつる涙か |
かな |
つれなきを いまはこひしと おもへとも こころよわくも おつるなみたか |
0810 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 伊勢(伊勢の御) |
原文 |
人しれす たえなましかは わひつつも なき名そとたに いはましものを |
かな |
ひとしれす たえなましかは わひつつも なきなそとたに いはましものを |
0811 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
それをたに 思ふ事とて わかやとを 見きとないひそ 人のきかくに |
かな |
それをたに おもふこととて わかやとを みきとないひそ ひとのきかくに |
0812 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
逢ふ事の もはらたえぬる 時にこそ 人のこひしき こともしりけれ |
かな |
あふことの もはらたえぬる ときにこそ ひとのこひしき こともしりけれ |
0813 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
わひはつる 時さへ物の 悲しきは いつこをしのふ 涙なるらむ |
かな |
わひはつる ときさへものの かなしきは いつこをしのふ なみたなるらむ |
0814 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 藤原おきかせ(藤原興風) |
原文 |
怨みても なきてもいはむ 方そなき かかみに見ゆる 影ならすして |
かな |
うらみても なきてもいはむ かたそなき かかみにみゆる かけならすして |
0815 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
夕されは 人なきとこを 打ちはらひ なけかむためと なれるわかみか |
かな |
ゆふされは ひとなきとこを うちはらひ なけかむためと なれるわかみか |
0816 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
わたつみの わか身こす浪 立返り あまのすむてふ うらみつるかな |
かな |
わたつみの わかみこすなみ たちかへり あまのすむてふ うらみつるかな |
0817 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
あらを田を あらすきかへし かへしても 人の心を 見てこそやまめ |
かな |
あらをたを あらすきかへし かへしても ひとのこころを みてこそやまめ |
0818 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
有そ海の 浜のまさこと たのめしは 忘るる事の かすにそ有りける |
かな |
ありそうみの はまのまさこと たのめしは わするることの かすにそありける |
0819 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
葦辺より 雲ゐをさして 行く雁の いやとほさかる わか身かなしも |
かな |
あしへより くもゐをさして ゆくかりの いやとほさかる わかみかなしも |
0820 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
しくれつつ もみつるよりも 事のはの 心の秋に あふそわひしき |
かな |
しくれつつ もみつるよりも ことのはの こころのあきに あふそわひしき |
0821 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
秋風の ふきとふきぬる むさしのは なへて草はの 色かはりけり |
かな |
あきかせの ふきとふきぬる むさしのは なへてくさはの いろかはりけり |
0822 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 小町(小野小町) |
原文 |
あきかせに あふたのみこそ かなしけれ わか身むなしく なりぬと思へは |
かな |
あきかせに あふたのみこそ かなしけれ わかみむなしく なりぬとおもへは |
0823 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 平貞文 |
原文 |
秋風の 吹きうらかへす くすのはの うらみても猶 うらめしきかな |
かな |
あきかせの ふきうらかへす くすのはの うらみてもなほ うらめしきかな |
0824 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
あきといへは よそにそききし あた人の 我をふるせる 名にこそ有りけれ |
かな |
あきといへは よそにそききし あたひとの われをふるせる なにこそありけれ |
0825 | |
詞書 |
題しらす/又は、 こなたかなたに人もかよはす |
作者 | よみ人しらす |
原文 |
わすらるる 身をうちはしの 中たえて 人もかよはぬ 年そへにける |
かな |
わすらるる みをうちはしの なかたえて ひともかよはぬ としそへにける |
0826 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 坂上これのり(坂上是則) |
原文 |
あふ事を なからのはしの なからへて こひ渡るまに 年そへにける |
かな |
あふことを なからのはしの なからへて こひわたるまに としそへにける |
0827 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | とものり(紀友則) |
原文 |
うきなから けぬるあわとも なりななむ 流れてとたに たのまれぬ身は |
かな |
うきなから けぬるあわとも なりななむ なかれてとたに たのまれぬみは |
0828 | |
詞書 | 題しらす |
作者 | 読人しらす(よみ人しらす) |
原文 |
流れては 妹背の山の なかにおつる よしのの河の よしや世中 |
かな |
なかれては いもせのやまの なかにおつる よしののかはの よしやよのなか |