原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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一時天皇 | 或る時天皇、 | 或る時、 |
越幸 近淡海國之時。 |
近つ淡海あふみの國に 越え幸でましし時、 |
天皇が近江の國へ 越えてお出ましになりました時に、 |
御立宇遲野上。 |
宇遲野うぢのの上に 御立みたちして、 |
宇治野の上にお立ちになつて |
望葛野。 | 葛野かづのを望みさけまして、 | 葛野かずのを御覽になつて |
歌曰。 | 歌よみしたまひしく、 | お詠みになりました御歌、 |
知婆能 | 千葉の | 葉の茂しげつた |
加豆怒袁美禮婆 | 葛野かづのを見れば、 | 葛野かずのを見れば、 |
毛毛知陀流 | 百千足ももちだる | 幾千も富み榮えた |
夜邇波母美由 | 家庭やにはも見ゆ。 | 家居が見える、 |
久爾能富母美由 | 國の秀ほも見ゆ。 | 國の中での良い處が見える。 |
と歌ひたまひき。 |