原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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於是天之日矛。 | ここに天の日矛、 | そこで天の日矛が |
聞其妻遁。 | その妻めの遁れしことを聞きて、 | その妻の逃げたことを聞いて、 |
乃追渡來。 | すなはち追ひ渡り來て、 | 追い渡つて來て |
將到難波之間。 | 難波に到らむとする間ほどに、 | 難波にはいろうとする時に、 |
其渡之神。 | その渡の神 | その海上の神が、 |
塞以不入。 | 塞さへて入れざりき。 | 塞いで入れませんでした。 |
故更還泊 多遲摩國。 |
かれ更に還りて、 多遲摩たぢまの國に泊はてつ。 |
依つて更に還つて、 但馬たじまの國に船泊はてをし、 |
即留其國而。 | すなはちその國に留まりて、 | その國に留まつて、 |
娶 多遲摩之 俣尾之女。 名前津見。 |
多遲摩の 俣尾またをが女、 名は前津見まへつみに娶あひて |
但馬の マタヲの女の マヘツミと結婚して |
生子。多遲摩母呂須玖。 | 生める子、多遲摩母呂須玖もろすく。 | 生うんだ子はタヂマモロスクです。 |
此之子。多遲摩斐泥。 | これが子多遲摩斐泥ひね。 | その子がタヂマヒネ、 |
此之子。多遲摩比那良岐。 | これが子多遲摩比那良岐ひならき。 | その子がタヂマヒナラキ、 |
此之子。多遲麻毛理。 | これが子多遲摩毛理もり五、 | その子は、タヂマモリ・ |
次多遲摩比多訶。 | 次に多遲摩比多訶ひたか、 | タヂマヒタカ・ |
次清日子。 | 次に清日子きよひこ | キヨ彦の |
〈三柱〉 | 三柱。 | 三人です。 |
此清日子。 | この清日子、 | このキヨ彦が |
娶當摩之咩斐。 | 當摩たぎまの咩斐めひに娶ひて | タギマノメヒと結婚して |
生子。 | 生める子、 | 生うんだ子が |
酢鹿之諸男。 | 酢鹿すがの諸男もろを、 | スガノモロヲと |
次妹菅竈〈上〉 由良度美。 〈此四字以音〉 |
次に妹 菅竈由良度美 すがかまゆらどみ、 |
スガカマ ユラドミです。 |
故上云 多遲摩比多訶。 |
かれ上にいへる 多遲摩比多訶、 |
上に擧げたタヂマヒタカが |
娶其姪 由良度美。 |
その姪 由良度美に娶ひて |
その姪めいの ユラドミと結婚して |
生子。 | 生める子、 | 生んだ子が |
葛城之 高額比賣命。 |
葛城かづらきの 高額たかぬか比賣の命。 |
葛城の タカヌカ姫の命で、 |
〈此者 息長帶比賣命之 御祖〉 |
(こは 息長帶比賣の命の 御祖なり) |
これがオキナガタラシ姫の命 (神功皇后)の 母君です。 |