原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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出雲(たちくも) |
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又歌曰。 | また歌よみしたまひしく、 | またお歌い遊ばされました。 |
波斯祁夜斯 | はしけやし | なつかしの |
和岐幣能迦多用 | 吾家わぎへの方よ | わが家やの方ほうから |
久毛韋多知久母 | 雲居起ち來も。 | 雲が立ち昇つて來るわい。 |
此者片歌也。 | こは片歌なり。 | これは片歌かたうたでございます。 |
草薙剣>ミヤズ姫 |
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此時御病甚急, | この時御病いと急にはかになりぬ。 | この時に、御病氣が非常に重くなりました。 |
爾御歌曰。 | ここに御歌よみしたまひしく、 | そこで、御歌みうたを、 |
袁登賣能。 | 孃子をとめの | 孃子おとめの |
登許能辨爾。 | 床の邊べに | 床とこのほとりに |
和賀淤岐斯。 | 吾わが置きし | わたしの置いて來た |
都流岐能多知。 | つるぎの大刀、 | 良よく切れる大刀たち、 |
曾能多知波夜。 | その大刀はや。 | あの大刀たちはなあ。 |
歌竟即崩。 |
と歌ひ竟をへて、 すなはち崩かむあがりたまひき。 |
と歌い終つて、 お隱れになりました。 |
爾貢上驛使。 |
ここに驛使はゆまづかひを 上たてまつりき。 |
そこで急使を上せて 朝廷に申し上げました。 |