原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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即自其國越。 | すなはちその國より越えて、 | その國から越えて |
出甲斐 坐 酒折宮之時。 |
甲斐に出でて、 酒折さかをりの宮に まします時に |
甲斐に出て、 酒折さかおりの宮に おいでになつた時に、 |
歌曰。 | 歌よみしたまひしく、 | お歌いなされるには、 |
邇比婆理 | 新治にひばり | 常陸の新治にいはり・ |
都久波袁須疑弖 | 筑波つくはを過ぎて、 | 筑波つくばを過すぎて |
伊久用加泥都流 | 幾夜か宿ねつる。 | 幾夜いくよ寢ねたか。 |
爾其 御火燒之老人。 |
ここにその 御火燒みひたきの老人おきな、 |
ここにその 火ひを燒たいている老人が |
續御歌以歌曰。 | 御歌に續ぎて歌よみして曰ひしく、 | 續いて、 |
迦賀那倍弖 | かがなべて | 日數ひかず重かさねて、 |
用邇波許許能用 | 夜には九夜ここのよ | 夜よは九夜ここのよで |
比邇波登袁加袁 | 日には十日を。 | 日ひは十日とおかでございます。 |
と歌ひき。 | と歌いました。 | |
是以譽其老人。 | ここを以ちてその老人を譽めて、 | そこでその老人を譽めて、 |
即給東國造也。 |
すなはち 東あづまの 國くにの造みやつこを給ひき。 |
吾妻あずまの國の造になさいました。 |