原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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能煩野 |
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自其幸行而。 | そこより幸でまして、 | 其處からおいでになつて、 |
到能煩野之時。 | 能煩野のぼのに到ります時に、 | 能煩野のぼのに行かれました時に、 |
思國以 歌曰。 |
國思しのはして 歌よみしたまひしく、 |
故郷をお思いになつて お歌いになりましたお歌、 |
ヤマトは国のまほろば |
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夜麻登波 | 倭やまとは | 大和は |
久爾能麻本呂婆 | 國のまほろば、 | 國の中の國だ。 |
多多那豆久 | たたなづく | 重かさなり合つている |
阿袁加岐 | 青垣、 | 青い垣、 |
夜麻碁母禮流 | 山隱ごもれる | 山に圍まれている |
夜麻登志宇流波斯 | 倭し美うるはし。 | 大和は美しいなあ。 |
命の全またけむ人 |
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又歌曰。 | また、歌よみしたまひしく、 | |
伊能知能 | 命の | 命が |
麻多祁牟比登波 | 全またけむ人は、 | 無事だつた人は、 |
多多美許母 | 疊薦たたみこも | 大和の國の |
幣具理能夜麻能 | 平群へぐりの山の | 平群へぐりの山の |
久麻加志賀波袁 | 熊白檮くまかしが葉を | りつぱなカシの木の葉を |
宇受爾佐勢 | 髻華うずに插せ。 | 頭插かんざしにお插しなさい。 |
曾能古 | その子。 | お前たち。 |
とお歌いになりました。 | ||
此歌者。 思國歌也。 |
この歌は 思國歌くにしのひうたなり。 |
この歌は 思國歌くにしのびうたという名の歌です。 |