原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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當藝野上=トゲの上 |
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自其處發。 | 其處そこより發たたして、 | 其處からお立ちになつて |
到當藝野上之時。 |
當藝たぎの野のの上に 到ります時に、 |
當藝たぎの野の上に おいでになつた時に |
詔者。 | 詔りたまはくは、 | 仰せられますには、 |
吾心 恆念 自虚翔行然。 |
「吾が心、 恆は虚そらよ翔かけり行かむ と念ひつるを、 |
「わたしの心は いつも空を飛んで行くと 思つていたが、 |
今吾足不得歩。 | 今吾が足え歩かず、 | 今は歩くことができなくなつて、 |
成當藝斯玖。 〈自當下六字以音〉 |
たぎたぎしくなりぬ」 とのりたまひき。 |
足がぎくぎくする」 と仰せられました。 |
故號其地。 | かれ其地そこに名づけて | 依つて其處を |
謂當藝也。 | 當藝たぎといふ。 | 當藝たぎといいます。 |
杖衝坂 |
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自其地。 | 其地そこより | 其處から |
差少幸行。 | ややすこし幸でますに、 | なお少しおいでになりますのに、 |
因甚疲 衝御杖。 |
いたく疲れませるに因りて、 御杖を衝つかして、 |
非常にお疲れなさいましたので、 杖をおつきになつて |
稍歩。 | ややに歩みたまひき。 | ゆるゆるとお歩きになりました。 |
故號其地。 | かれ其地そこに名づけて | そこでその地を |
謂杖衝坂也。 | 杖衝坂つゑつきざかといふ。 | 杖衝つえつき坂といいます。 |