原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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故到於出雲。 | かれ出雲いづもに到りまして、 | かくて出雲の國においでになつて、 |
拜訖大神。 | 大神おほかみを拜み訖をへて、 | 出雲の大神を拜み終つて |
還上之時。 | 還り上ります時に、 | 還り上つておいでになる時に、 |
肥河之中。 | 肥ひの河の中に | 肥ひの河の中に |
作黒巣橋。 | 黒樔くろすの橋を作り、 | 黒木の橋を作り、 |
仕奉假宮 而坐。 |
假宮を仕へ奉まつりて、 坐まさしめき。 |
假の御殿を造つて お迎えしました。 |
爾 出雲國 造之祖。 |
ここに 出雲いづもの國くにの 造みやつこの祖、 |
ここに 出雲の 臣の祖先の |
名岐比佐都美。 |
名は岐比佐都美 きひさつみ、 |
キヒサツミという者が、 |
餝青葉山而。 | 青葉の山を餝かざりて、 | 青葉の作り物を飾り立てて |
立其河下。 | その河下に立てて、 | その河下にも立てて |
將獻 大御食之時。 |
大御食おほみあへ 獻らむとする時に、 |
御食物を 獻ろうとした時に、 |
其御子詔言。 | その御子詔りたまはく、 | その御子が仰せられるには、 |
是於河下。 | 「この河下に | 「この河の下に |
如青葉山者。 | 青葉の山なせるは、 | 青葉が山の姿をしているのは、 |
見山非山。 | 山と見えて山にあらず。 | 山かと見れば山ではないようだ。 |
若坐出雲之 石〓[石+司]之 曾宮。 |
もし出雲いづもの いはくまの 曾その宮にます、 |
これは出雲の いわくまの 曾その宮に |
葦原色許男大神 以伊都玖之 祝大廷乎。 問賜也。 |
葦原色許男 あしはらしこをの大神を もち齋いつく 祝はふりが大庭にはか」 と問ひたまひき。 |
お鎭まりになつている アシハラシコヲの大神を お祭り申し上げる 神主の祭壇であるか」 と仰せられました。 |
ホムチがしゃべった!(しかも高等な内容) |
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爾所 遣御伴王等。 |
ここに 御供に遣さえたる 王みこたち、 |
そこで お伴に遣された 王たちが |
聞歡 見喜而。 |
聞き歡び 見喜びて、 |
聞いて歡び、 見て喜んで、 |
御子者。 坐檳榔之 長穂宮而。 |
御子は 檳榔あぢまさの 長穗ながほの宮に ませまつりて、 |
御子を 檳榔あじまさの 長穗ながほの宮に 御案内して、 |
貢上 驛使。 |
驛使 はゆまづかひを たてまつりき。 |
急使を奉つて 天皇に奏上致しました。 |