原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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於是天皇。 | ここに天皇詔のりたまはく、 | ここで天皇は |
(詔)雖怨其兄。 | 「その兄を怨きらひたまへども、 | 「兄には恨みがあるが、 |
猶不得忍愛其后。 |
なほその后を愛しとおもふにえ忍へず」 とのりたまひて、 |
皇后に對する愛は變らない」 と仰せられて、 |
故即有 得后之心。 |
后を得むと おもふ心ましき。 |
皇后を得られようとする 御心がありました。 |
是以 選聚 軍士之中。 力士 輕捷而。 |
ここを以ちて 軍士いくさびとの中に 力士ちからびとの 輕捷はやきを 選り聚つどへて、 |
そこで 軍隊の中から 敏捷な人を 選り集めて |
宣者。 | 宣りたまはくは、 | 仰せになるには、 |
取其御子之時。 | 「その御子を取らむ時に、 | 「その御子を取る時に |
乃掠取 其母王。 |
その母王ははみこをも 掠かそひ取れ。 |
その母君をも 奪い取れ。 |
或髮或手。 | 御髮にもあれ、御手にもあれ、 | 御髮でも御手でも |
當隨取獲而。 | 取り獲むまにまに、 | 掴まえ次第に掴んで |
掬以控出。 |
掬つかみて控ひき出でよ」 とのりたまひき。 |
引き出し申せ」 と仰せられました。 |