原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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故其御子令 拜其大神宮。 將遣之時。 |
かれその御子を、 その大神の宮を 拜をろがましめに 遣したまはむとする時に、 |
依つてその御子をして その大神の宮を拜ましめに お遣りになろうとする時に、 |
令副誰人者吉。 |
誰を副たぐへしめば 吉えけむとうらなふに、 |
誰を副えたら よかろうかと占いましたら、 |
爾曙立王 食ト。 |
ここに曙立あけたつの王 卜うらに食あへり。 |
アケタツの王が 占いに合いました。 |
宇氣比=請負 |
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故科 曙立王。 |
かれ曙立あけたつの王に 科おほせて、 |
依つてアケタツの王に 仰せて |
令宇氣比 白。 |
うけひ 白さしむらく、 |
誓言を 申さしめなさいました。 |
〈宇氣比三字以音〉 | ||
因拜此大神。 誠有驗者。 |
「この大神を拜むによりて、 誠まことに驗しるしあらば、 |
「この大神を拜むことによつて 誠にその驗があるならば、 |
住是鷺巣 池之樹鷺乎。 宇氣比落。 |
この鷺さぎの巣すの 池の樹に住める鷺を、 うけひ落ちよ」と、 |
この鷺の巣の 池の樹に住んでいる鷺が 我が誓によつて落ちよ」 |
如此詔之時。 | かく詔りたまふ時に、 | かように仰せられた時に |
宇氣比 其鷺墮地死。 |
うけひて その鷺地つちに墮ちて死にき。 |
その鷺が池に落ちて死にました。 |
又詔之 宇氣比活(爾)者。 |
また「うけひ活け」と詔りたまひき。 ここにうけひしかば、 |
また「活きよ」と 誓をお立てになりましたら |
更活。 | 更に活きぬ。 | 活きました。 |
又在甜白檮 之前 |
また甜白檮あまがしの 前さきなる |
またアマカシの 埼さきの |
葉廣熊白檮。 |
葉廣熊白檮 はびろくまがしを |
廣葉のりつぱなカシの木を |
令宇氣比枯。 亦令宇氣比生。 |
うけひ枯らし、 またうけひ生かしめき。 |
誓を立てて枯らしたり 活かしたりしました。 |
爾名賜。 其曙立王。 謂倭者 師木登美 豐朝倉 曙立王。 |
ここに その曙立あけたつの王に、 倭やまとは 師木しきの登美とみの 豐朝倉とよあさくらの 曙立あけたつの王といふ名を賜ひき。 |
それでアケタツの王に、 「大和は師木しき、 登美とみの 豐朝倉とよあさくらの アケタツの王」 という名前を下さいました。 |
〈登美二字以音〉 |