原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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故其軍士等。 | かれその軍士ども、 | その兵士たちが |
還來奏言。 | 還り來て、奏まをして言さく、 | 還つて來て申しましたには、 |
御髮自落。 | 「御髮おのづから落ち、 | 「御髮が自然に落ち、 |
御衣易破。 | 御衣破れ易く、 | お召物は破れ易く、 |
亦所纒 御手之玉緒。 便絶故。 |
御手に纏まかせる 玉の緒も すなはち絶えぬ。 |
御手に纏いておいでになる 玉の緒も 切れましたので、 |
不獲御祖。 | かれ御祖を獲まつらず、 | 母君をばお取り申しません。 |
取得御子。 | 御子を取り得まつりき」とまをす。 | 御子は取つて參りました」と申しました。 |
爾天皇。 | ここに天皇 | そこで天皇は |
悔恨而。 | 悔い恨みたまひて、 | 非常に殘念がつて、 |
惡作玉人等。 | 玉作りし人どもを惡にくまして、 | 玉を作つた人たちをお憎しみになつて、 |
皆奪其地。 | その地ところをみな奪とりたまひき。 | その領地を皆お奪とりになりました。 |
故諺曰 不得地玉作 也。 |
かれ諺ことわざに、 地ところ得ぬ玉作り といふなり。 |
それで諺ことわざに、 「處ところを得ない玉作たまつくりだ」 というのです。 |