原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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大物主と活玉の玄孫 |
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是以 驛使 班于四方。 |
ここを以ちて、 驛使はゆまづかひを 四方よもに班あかちて、 |
そこで 急使を 四方に出して |
求謂 意富多多泥古 人之時。 |
意富多多泥古 おほたたねこといふ人を 求むる時に、 |
オホタタネコという人を 求めた時に、 |
於河内之美努村。 見得其人 貢進。 |
河内の美努みのの村に その人を見得て、 貢たてまつりき。 |
河内の國のミノの村で その人を探し出して 奉りました。 |
爾天皇。 問賜之。 汝者誰子也。 |
ここに天皇問ひたまはく、 「汝いましは誰が子ぞ」 と問ひたまひき。 |
そこで天皇は 「お前は誰の子であるか」 とお尋ねになりましたから、 |
答曰。 | 答へて白さく | 答えて言いますには |
僕者。 | 「僕あは | |
大物主大神。娶 陶津耳命之女。 活玉依毘賣。 生子。 名櫛御方命之子。 飯肩巣見命之子。 建甕槌命之子。 |
大物主の大神、 陶津耳すゑつみみの命が女、 活玉依いくたまより毘賣に娶ひて 生みませる子、 名は櫛御方くしみかたの命の子、 飯肩巣見いひがたすみの命の子、 建甕槌たけみかづちの命の子、 |
「オホモノヌシの神が スヱツミミの命の女の イクタマヨリ姫と結婚して 生んだ子は クシミカタの命です。 その子がイヒカタスミの命、 その子がタケミカヅチの命、 |
僕意 富多多泥古白。 |
僕やつこ 意富多多泥古」とまをしき。 |
その子がわたくし オホタタネコでございます」と申しました。 |
御諸山(三輪山)の大美和之大神=大物主大神 |
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於是天皇 大歡以。 |
ここに天皇 いたく歡びたまひて、 |
そこで天皇が 非常にお歡よろこびになつて |
詔之。 | 詔りたまはく、 | 仰せられるには、 |
天下平。 | 「天の下平ぎ、 | 「天下が平ぎ |
人民榮。 |
人民おほみたから榮えなむ」 とのりたまひて、 |
人民が榮えるであろう」 と仰せられて、 |
即以 意富多多泥古命。 爲神主而。 |
すなはち 意富多多泥古の命を、 神主かむぬしとして、 |
このオホタタネコを 神主かんぬしとして |
於御諸山。 | 御諸山に、 | ミモロ山で |
拜祭。 意富美和之大神前。 |
意富美和おほみわの大神の御前を 拜いつき祭りたまひき。 |
オホモノヌシの神を お祭り申し上げました。 |