原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
---|---|---|
初天皇。 | 初め天皇、 | 初め天皇が |
逢難 逃時。 |
難わざはひに逢ひて、 逃げましし時に、 |
災難に逢つて 逃げておいでになつた時に、 |
求 奪其御粮 猪甘老人。 |
その御粮かれひを奪とりし 猪甘ゐかひの老人おきなを 求まぎたまひき。 |
その乾飯ほしいを奪つた 豚飼ぶたかいの老人を お求めになりました。 |
是得求。 | ここに求ぎ得て、 | そこで求め得ましたのを |
喚上而。 | 喚び上げて、 | 喚び出して |
斬於 飛鳥河之河原。 |
飛鳥河の河原に 斬りて、 |
飛鳥河の河原で 斬つて、 |
皆斷其族之 膝筋。 |
みなその族やからどもの 膝の筋を斷ちたまひき。 |
またその一族どもの 膝の筋をお切りになりました。 |
是以至今。 | ここを以ちて今に至るまで、 | それで今に至るまで |
其子孫上於倭之日。 | その子孫こども倭に上る日、 | その子孫が大和に上る日には |
必自 跛也。 |
かならずおのづから 跛あしなへくなり。 |
きつと びつこになるのです。 |
故 能見志米岐。 其老所在。 〈志米岐 三字以音〉 |
かれ その老の所在ありかを 能く見しめき。 |
その老人の所在を よく御覽になりましたから、 |
故其地謂 志米須也。 |
かれ其處そこを 志米須しめすといふ。 |
其處を シメスといいます。 |