原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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於是。 二柱王子等。 |
ここに 二柱の御子たち、 |
ここで お二方ふたかたの御子たちが |
各相 讓天下。 |
おのもおのも 天の下を讓りたまひき。 |
互に 天下をお讓りになつて、 |
意祁命。 | 意富祁おほけの命、 | オケの命が、 |
讓其弟。 袁祁命曰。 |
その弟袁祁の命に 讓りてのりたまはく、 |
その弟ヲケの命に お讓り遊ばされましたには、 |
住於針間 志自牟家時。 |
「針間はりまの 志自牟しじむが家に住みし時に、 |
「播磨の國の シジムの家に住んでおつた時に、 |
汝命不顯名者。 | 汝なが命名を顯はさざらませば、 | あなたが名を顯わさなかつたなら |
更非臨 天下之君。 |
更に天の下知らさむ君とは ならざらまし。 |
天下を治める君主とは ならなかつたでしよう。 |
是既 汝命之功。 |
これ既に 汝なが命の功いさをなり。 |
これは あなた樣のお手柄であります。 |
故吾 雖兄。 |
かれ吾、 兄にはあれども、 |
ですから、 わたくしは兄ではありますが、 |
猶汝命。 | なほ汝が命 | あなたが |
先治天下而。 |
まづ天の下を治らしめせ」 とのりたまひて、 |
まず天下をお治めなさい」 と言つて、 |
堅讓。 | 堅く讓りたまひき。 | 堅くお讓りなさいました。 |
故不得辭而。 | かれえ辭いなみたまはずて、 | それでやむことを得ないで、 |
袁祁命。 | 袁祁の命、 | ヲケの命が |
先治天下也。 | まづ天の下治らしめしき。 | まず天下をお治めなさいました。 |