原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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金でスキにする歌 |
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又天皇。 | また天皇、 | また天皇、 |
婚 丸邇之 佐都紀臣之女。 袁杼比賣。 |
丸邇わにの 佐都紀さつきの臣が女、 袁杼をど比賣を 婚よばひに、 |
丸邇わにの サツキの臣の女の ヲド姫と 結婚をしに |
幸行于 春日之時。 |
春日に いでましし時、 |
春日に おいでになりました時に、 |
媛女逢道。 | 媛女をとめ、道に逢ひて、 | その孃子が道で逢つて、 |
即見幸行而。 | すなはち幸行いでましを見て、 | おでましを見て |
逃隱岡邊。 | 岡邊をかびに逃げ隱りき。 | 岡邊に逃げ隱れました。 |
故作御歌。 | かれ御歌よみしたまへる、 | そこで歌をお詠みになりました。 |
其歌曰。 | その御歌、 | その御歌は、 |
袁登賣能 | 孃子をとめの | お孃さんの |
伊加久流袁加袁 | い隱かくる岡を | 隱れる岡を |
加那須岐母 | 金鉏かなすきも | じようぶな鉏すきが |
伊本知母賀母 | 五百箇いほちもがも。 | 澤山あつたらよいなあ、 |
須岐波奴流母能 | 鉏すき撥はぬるもの。 | 鋤すき撥はらつてしまうものを。 |
故號其岡。 | かれその岡に名づけて、 | そこでその岡を |
謂金鉏岡也。 | 金鉏かなすきの岡といふ。 | 金鉏かなすきの岡と名づけました。 |