原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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蜻蛉=とんぼ・かげろう |
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即幸 阿岐豆野而。 |
すなはち 阿岐豆野あきづのにいでまして、 |
それから 吉野のアキヅ野においでになつて |
御猟之時。 | 御獵したまふ時に、 | 獵をなさいます時に、 |
天皇。 坐御呉床。 |
天皇、 御呉床にましましき。 |
天皇が お椅子においでになると、 |
爾虻 咋御腕。 |
ここに、虻あむ、 御腕ただむきを咋くひけるを、 |
虻あぶが 御腕を咋くいましたのを、 |
即蜻蛉來。 咋其虻而飛。 〈訓蜻蛉云阿岐豆〉 |
すなはち蜻蛉あきづ來て、 その虻あむを咋くひて、 飛とびき。 |
蛉蜻とんぼが來て その虻を咋つて 飛んで行きました。 |
そらみつ大和の蜻蛉島 |
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於是作御歌。 | ここに御歌よみしたまへる、 | そこで歌をお詠みになりました。 |
其歌曰。 | その御歌、 | その御歌は、 |
美延斯怒能 | み吉野えしのの | 吉野の |
袁牟漏賀多氣爾 | 袁牟漏をむろが嶽たけに | ヲムロが嶽たけに |
志斯布須登 | 猪鹿しし伏すと、 | 猪ししがいると |
多禮曾 | 誰たれぞ | 陛下に申し上げたのは誰か。 |
意富麻幣爾麻袁須 | 大前に申す。 | |
夜須美斯志 | やすみしし | 天下を知ろしめす |
和賀淤富岐美能 | 吾わが大君の | 天皇は |
斯志麻都登 | 猪鹿しし待つと | 猪を待つと |
阿具良爾伊麻志 | 呉床あぐらにいまし、 | 椅子に御座ぎよざ遊ばされ |
斯漏多閇能 | 白栲しろたへの | 白い織物の |
蘇弖岐蘇那布 | 袖そで著具きそなふ | お袖で裝うておられる |
多古牟良爾 | 手腓たこむらに | 御手の肉に |
阿牟加岐都岐 | 虻あむ掻き著き、 | 虻が取りつき |
曾能阿牟袁 | その虻を | その虻を |
阿岐豆波夜具比 | 蜻蛉あきづ早咋くひ、 | 蜻蛉とんぼがはやく食い、 |
加久能碁登 | かくのごと | かようにして |
那爾於波牟登 | 名に負はむと、 | 名を持とうと、 |
蘇良美都 | そらみつ | |
夜麻登能久爾袁 | 倭やまとの國を | この大和の國を |
阿岐豆志麻登布 | 蜻蛉島あきづしまとふ。 | 蜻蛉島あきづしまというのだ。 |
アキズ(飽きない食い合い) |
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故自其時。 | かれその時より、 | その時からして、 |
號其野。 | その野に名づけて | その野を |
謂阿岐豆野也。 | 阿岐豆野あきづのといふ。 | アキヅ野というのです。 |