原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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天皇。 | 天皇 | 天皇が |
幸行吉野宮之時。 | 吉野えしのの宮にいでましし時、 | 吉野の宮においでになりました時に、 |
吉野川之濱。 | 吉野川の邊に、 | 吉野川のほとりに |
有童女。 其形姿美麗。 |
童女をとめあり、 それ形姿美麗かほよかりき。 |
美しい孃子がおりました。 |
故婚是童女而。 | かれこの童女を召して、 | そこでこの孃子を召して |
還坐於宮。 | 宮に還りましき。 | 宮にお還りになりました。 |
後更亦 幸行吉野之時。 |
後に更に 吉野えしのにいでましし時に、 |
後に更に 吉野においでになりました時に、 |
留 其童女之所遇。 |
その童女の遇ひし所に 留まりまして、 |
その孃子に遇いました處に お留まりになつて、 |
於其處立 大御呉床而。 |
其處そこに 大御呉床あぐらを立てて、 |
其處に お椅子を立てて、 |
坐其御呉床。 | その御呉床にましまして、 | そのお椅子においでになつて |
彈御琴。 | 御琴を彈かして、 | 琴をお彈きになり、 |
令爲儛其孃子。 | その童女に儛はしめたまひき。 | その孃子に舞まわしめられました。 |
爾因 其孃子之好儛。 |
ここに その童女の好く儛へるに因りて、 |
その孃子は好く舞いましたので、 |
作御歌。 | 御歌よみしたまひき。 | 歌をお詠みになりました。 |
其歌曰。 | その御歌、 | その御歌は、 |
阿具良韋能 | 呉床座あぐらゐの | 椅子にいる |
加微能美弖母知 | 神の御手もち | 神樣が御手みてずから |
比久許登爾 | 彈く琴に | 彈かれる琴に |
麻比須流袁美那 | 舞する女をみな、 | 舞を舞う女は |
登許余爾母加母 | 常世とこよにもがも。 | 永久にいてほしいことだな。 |