古事記 宇岐歌・志都歌・袁杼比売~原文対訳

天語歌③ 古事記
下巻⑥
21代 雄略天皇
袁杼比賣(おど姫)との歌
雄略天皇陵
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
故於此豐樂。 かれ豐とよの樂あかりに、 その御酒宴に
譽其三重婇而。 その三重の婇を譽めて、 三重の采女を譽めて、
給多祿也。 物多さはに給ひき。 物を澤山にくださいました。
     

宇岐歌

     
是豐樂之日。  この豐の樂の日、  この御酒宴の日に、
春日之袁杼比賣 また春日の袁杼比賣をどひめが また春日のヲド姫が
獻大御酒之時。 大御酒獻りし時に、 御酒を獻りました時に、
天皇歌曰。 天皇の歌ひたまひしく、 天皇のお歌いになりました歌は、
     
美那曾曾久 水灌みなそそく 水みずのしたたるような
淤美能袁登賣 臣おみの孃子をとめ、 そのお孃さんが、
本陀理登良須母 ほだり取らすも。 銚子ちようしを持つていらつしやる。
本陀理斗理 ほだり取り 銚子を持つなら
加多久斗良勢 堅く取らせ。 しつかり持つていらつしやい。
斯多賀多久 下堅したがたく 力ちからを入れて
夜賀多久斗良勢 彌堅やがたく取らせ。 しつかりと持つていらつしやい。
本陀理斗良須古 ほだり取らす子。 銚子を持つていらつしやるお孃さん。
     
此者。
宇岐歌也。
 こは
宇岐うき歌なり。
 これは
宇岐歌うきうたです。
     

志都歌

     
爾袁杼比賣獻歌。 ここに袁杼比賣、歌獻りき。 ここにヲド姫の獻りました歌は、
其歌曰。 その歌、  
     
夜須美斯志 やすみしし 天下を知ろしめす
和賀淤富岐美能 吾が大君の 天皇の
阿佐斗爾波 伊余理陀多志 朝戸あさとには い倚り立だたし、 朝戸にはお倚より立ち遊ばされ
由布斗爾波 伊余理陀多須 夕戸には い倚り立だたす 夕戸ゆうどにはお倚り立ち遊ばされる
和岐豆岐賀斯多能 脇几わきづきが 下の 脇息きようそくの下の
伊多爾母賀 板にもが。 板にでもなりたいものです。
阿世袁 吾兄あせを。 あなた。
     
此者志都歌也。  こは志都しづ歌なり。  これは志都歌しずうたです。
天語歌③ 古事記
下巻⑥
21代 雄略天皇
袁杼比賣(おど姫)との歌
雄略天皇陵