原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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故於此豐樂。 | かれ豐とよの樂あかりに、 | その御酒宴に |
譽其三重婇而。 | その三重の婇を譽めて、 | 三重の采女を譽めて、 |
給多祿也。 | 物多さはに給ひき。 | 物を澤山にくださいました。 |
宇岐歌 |
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是豐樂之日。 | この豐の樂の日、 | この御酒宴の日に、 |
亦春日之袁杼比賣。 | また春日の袁杼比賣をどひめが | また春日のヲド姫が |
獻大御酒之時。 | 大御酒獻りし時に、 | 御酒を獻りました時に、 |
天皇歌曰。 | 天皇の歌ひたまひしく、 | 天皇のお歌いになりました歌は、 |
美那曾曾久 | 水灌みなそそく | 水みずのしたたるような |
淤美能袁登賣 | 臣おみの孃子をとめ、 | そのお孃さんが、 |
本陀理登良須母 | ほだり取らすも。 | 銚子ちようしを持つていらつしやる。 |
本陀理斗理 | ほだり取り | 銚子を持つなら |
加多久斗良勢 | 堅く取らせ。 | しつかり持つていらつしやい。 |
斯多賀多久 | 下堅したがたく | 力ちからを入れて |
夜賀多久斗良勢 | 彌堅やがたく取らせ。 | しつかりと持つていらつしやい。 |
本陀理斗良須古 | ほだり取らす子。 | 銚子を持つていらつしやるお孃さん。 |
此者。 宇岐歌也。 |
こは 宇岐うき歌なり。 |
これは 宇岐歌うきうたです。 |
志都歌 |
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爾袁杼比賣獻歌。 | ここに袁杼比賣、歌獻りき。 | ここにヲド姫の獻りました歌は、 |
其歌曰。 | その歌、 | |
夜須美斯志 | やすみしし | 天下を知ろしめす |
和賀淤富岐美能 | 吾が大君の | 天皇の |
阿佐斗爾波 伊余理陀多志 | 朝戸あさとには い倚り立だたし、 | 朝戸にはお倚より立ち遊ばされ |
由布斗爾波 伊余理陀多須 | 夕戸には い倚り立だたす | 夕戸ゆうどにはお倚り立ち遊ばされる |
和岐豆岐賀斯多能 | 脇几わきづきが 下の | 脇息きようそくの下の |
伊多爾母賀 | 板にもが。 | 板にでもなりたいものです。 |
阿世袁 | 吾兄あせを。 | あなた。 |
此者志都歌也。 | こは志都しづ歌なり。 | これは志都歌しずうたです。 |