原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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故到幸大坂 山口之時。 |
かれ大坂の 山口に到りましし時に、 |
かくて二上山ふたかみやまの 大坂の 山口においでになりました時に、 |
遇一女人。 | 女人をみな遇へり。 | 一人の女が來ました。 |
其女人白之。 | その女人の白さく、 | その女の申しますには、 |
持兵人等。 | 「兵つはものを持てる人ども、 | 「武器を持つた人たちが |
多塞茲山。 | 多さはにこの山を塞さへたれば、 | 大勢この山を塞いでおります。 |
自當岐麻道。 | 當岐麻道たぎまぢより廻りて、 | 當麻路たぎまじから廻つて、 |
廻應越幸。 |
越え幸でますべし」 とまをしき。 |
越えておいでなさいませ」 と申し上げました。 |
難波でナンパ・奈の良路 |
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爾天皇歌曰。 | ここに天皇歌よみしたまひしく、 | 依つて天皇の歌われました御歌は、 |
於富佐迦邇。 | 大坂に | 大坂で |
阿布夜袁登賣袁。 | 遇ふや孃子をとめを。 | 逢あつた孃子おとめ。 |
美知斗閇婆。 | 道問へば | 道を問えば |
多陀邇波能良受。 | 直ただには告のらず、 | 眞直まつすぐにとはいわないで |
當藝麻知袁能流。 | 當岐麻路たぎまぢを告る。 | 當麻路たぎまじを教えた。 |
二上山=難波と奈良の境界
當岐麻道=二上山の下道