原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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いけいけ鳥山(猪を食い止めよ。無理) |
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天皇。聞 看其大后。 自山代上幸而。 |
天皇、 その大后は 山代より上り幸でましぬと 聞こしめして |
天皇は 皇后樣が山城を通つて 上つておいでになつたと お聞き遊ばされて、 |
使舍人。 名謂鳥山人。 |
舍人名は 鳥山といふ人を使はして |
トリヤマという舍人とねりを お遣りになつて |
送御歌曰。 | 御歌を送りたまひしく、 |
歌をお送りなさいました。 その御歌は、 |
夜麻斯呂邇 | 山代に | 山城やましろに |
伊斯祁登理夜麻 | いしけ鳥山、 | 追おい附つけ、トリヤマよ。 |
伊斯祁伊斯祁 | いしけいしけ | 追い附け、追い附け。 |
阿賀波斯豆麻邇 | 吾あが愛はし妻づまに | 最愛の我が妻に |
伊斯岐阿波牟加母 | いしき遇はむかも。 | 追い附いて逢えるだろう。 |
大猪子(太い腹・石姫・毛深い) |
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又續遣 丸邇臣 口子而。 |
また續ぎて 丸邇わにの臣 口子くちこを遣して |
續つづいて 丸邇わにの臣おみ クチコを遣して、 |
歌曰。 | 歌よみしたまひしく、 | 御歌をお送りになりました。 |
美母呂能 | 御諸みもろの | ミモロ山の |
曾能多迦紀那流 | その高城たかきなる | 高臺たかだいにある |
意富韋古賀波良 | 大猪子おほゐこが原。 | オホヰコの原。 |
意富韋古賀 | 大猪子が | その名のような大豚おおぶたの |
波良邇阿流 | 腹にある、 | 腹にある |
岐毛牟加布 | 肝向ふ | 向き合つている臟腑きも、 |
許許呂袁陀邇迦 | 心をだにか | せめて心だけなりと |
阿比淤母波受阿良牟 | 相思おもはずあらむ。 | 思わないで居られようか。 |
大根白い(太い足・黒姫・ツルツル) |
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又歌曰。 | また歌よみしたまひしく、 | またお歌い遊ばされました御歌、 |
都藝泥布 | つぎねふ | 山やままた山やまの |
夜麻志呂賣能 | 山代女の | 山城の女が |
許久波母知 | 木钁こくは持ち | 木の柄のついた鍬くわで |
宇知斯淤富泥 | 打ちし大根、 | 掘つた大根、 |
泥士漏能 | 根白 | その眞白まつしろな |
斯漏多陀牟岐 | 白腕しろただむき、 | 白い腕を |
麻迦受祁婆許曾 | 纏まかずけばこそ | 交かわさずに來たなら、 |
斯良受登母伊波米 | 知らずとも言はめ。 | 知らないとも云えようが。 |