原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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乃自其嶋傳而。 | すなはちその島より傳ひて、 | そこでその島から傳つて |
幸行吉備國。 | 吉備きびの國に幸でましき。 | 吉備の國においでになりました。 |
爾黑日賣。 | ここに黒日賣、 | そこで黒姫が |
令大坐 其國之山方地而。 |
その國の山縣やまがたの地ところに おほましまさしめて、 |
その國の山の御園に 御案内申し上げて、 |
獻大御飯。 | 大御飯みけ獻りき。 | 御食物を獻りました。 |
於是爲 煮大御羹。 |
ここに大御羮 おほみあつものを煮むとして、 |
そこで羮あつものを 獻ろうとして |
採其地之 菘菜時。 |
其地そこの 菘菜あをなを採つむ時に、 |
青菜を採つんでいる時に、 |
天皇。 到坐。 其孃子之採菘處。 |
天皇 その孃子の菘な採む處に 到りまして、 |
天皇が その孃子の青菜を採む處に おいでになつて、 |
歌曰。 | 歌よみしたまひしく、 | お歌いになりました歌は、 |
夜麻賀多邇。 | 山縣がたに | 山の畑に |
麻祁流阿袁那母。 | 蒔ける菘あをなも、 | 蒔いた青菜も |
岐備比登登。 | 吉備人と | 吉備の人と |
等母邇斯都米婆。 | 共にし摘めば、 | 一緒に摘むと |
多怒斯久母阿流迦。 | 樂たのしくもあるか。 | 樂しいことだな。 |
ここで天皇が農作業をしているのは、表面的には、天皇でも庶民の土にまみれる生活を分かっている(隣国のように貧しい人民に近い君主)とアピールする文脈だが、聖帝の三年租税免除のエピソード同様100%ありえない内容なので、実際の行動を讃えているのではなく、理想と庶民の生活を知る戒めを示している(万葉1の雄略天皇の歌も同旨)。
歌詞としての「山縣に蒔ける菘(あをな)」は「つぎねふ山代女の」大根の歌の伏線とみる。
大根は大猪子(おおいこ・ダイイコ)と掛けその太い腹(イワヒメ)と対比し、クロヒメの白くて太い足。それをさわさわ(意富泥佐和佐和)する。意富泥=おほね=大根
猪は腹は太いが足は細い。そして毛むくじゃら。大根はツルツルしている。このような内容は、恐らく学者の解釈の限界を超えているだろう。