原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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やまとへの歌 |
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天皇上幸之時。 |
天皇上り 幸いでます時に、 |
天皇が京に上つて おいでになります時に、 |
黑日賣獻御歌曰。 | 黒日賣、御歌、獻りて曰ひしく、 | 黒姫の獻つた歌は、 |
1雲離れ |
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夜麻登幣邇 | 倭やまと方へに | 大和の方へ |
爾斯布岐阿宜弖 | 西風にし吹き上あげて、 | 西風が吹き上げて |
玖毛婆那禮 | 雲離ばなれ | 雲が離れるように |
曾岐袁理登母 | そき居をりとも、 | 離れていても |
和禮和須禮米夜 | 吾われ忘れめや。 | 忘れは致しません。 |
2こもりづの |
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又歌曰。 | また歌ひて曰ひしく、 | また、 |
夜麻登幣邇 | 倭やまと方へに | 大和の方へ行くのは |
由玖波多賀都麻 | 往くは誰が夫つま。 | 誰方樣どなたさまでしよう。 |
許母理豆能 | 隱津こもりづの | 地の下の水のように、 |
志多用波閇都都 | 下よ延はへつつ | 心の底で物思いをして |
由久波多賀都麻 | 往くは誰が夫。 | 行くのは誰方樣どなたさまでしよう。 |
ここでの歌の主旨は、あなたは一体誰の夫かというもの。答えは次の段の説明。
武田訳では1番の末尾「われ忘れめや」を「忘れはいたしません」としているが、「私を忘れないでしょうか」という疑問あるいは反語と解する。
明らかに対になっている歌はバラバラに見てはならない。そして常に文脈を無視して天皇を賛美し思慕していると見ないように。