原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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是以 此二神。 |
ここを以ちて この二神ふたはしらのかみ、 |
そこで このお二方の神が |
降到出雲國 伊那佐之小濱而。 〈伊那佐三字以音〉 |
出雲の國の 伊耶佐いざさの 小濱をはまに降り到りて、 |
出雲の國の イザサの 小濱おはまに降りついて、 |
拔十掬劔。 | 十掬とつかの劒を拔きて | 長い劒を拔いて |
逆刺立 于浪穗。 |
浪の穗に 逆に刺し立てて、 |
波の上に 逆樣に刺さし立てて、 |
趺坐 其劔前。 |
その劒の前さきに 趺あぐみ坐ゐて、 |
その劒のきつさきに 安座あぐらをかいて |
問 其大國主神言。 |
その大國主の神に 問ひたまひしく、 |
大國主の命に お尋ねになるには、 |
天照大御神。 | 「天照らす大御神 | 「天照らす大神、 |
高木神之命以。 | 高木の神の命もちて | 高木の神の仰せ言で |
問使之。 | 問の使せり。 | 問の使に來ました。 |
汝之宇志波祁流 〈此五字以音〉 葦原中國者。 |
汝なが領うしはける 葦原の中つ國に、 |
あなたの領している 葦原の中心の國は |
我御子之 所知國。 |
我あが御子の 知らさむ國と |
我が御子の 治むべき國であると |
言依賜。 | 言よさしたまへり。 | 御命令がありました。 |
故汝心奈何。 |
かれ汝が心いかに」 と問ひたまひき。 |
あなたの心はどうですか」 とお尋ねになりましたから、 |
爾答白之。 | ここに答へ白さく、 | 答えて申しますには |
僕者不得白。 | 「僕あはえ白さじ。 | 「わたくしは何とも申しません。 |
我子 八重言代主神。 |
我が子 八重言代主やへことしろぬしの神 |
わたくしの子の コトシロヌシの神が |
是可白然。 爲鳥遊取魚而。 |
これ白すべし。然れども 鳥の遊漁あそびすなどりして、 |
御返事申し上ぐべきですが、 鳥や魚の獵をしに |
往御大之前。 | 御大みほの前さきに往きて、 | ミホの埼さきに行いつておつて |
未還來。 |
いまだ還り來ず」 とまをしき。 |
まだ還つて參りません」 と申しました。 |